僕らは舌の融合したシャム双生児です。母は産後まもなく体調を崩し他界して、父は呑んだくれて僕らを橋の上から棄てました。僕らは朝な夕な鼻先の触れ合うほど近くで互いの濃い息を上唇に受け止め、互いの舌をしゃぶるように食事しながら今日まで生きてきたのです。
 リズムよく左右に脚を出し自在に歩き廻ります。隙間なく抱き合い睡ります。ときおり、舌の裏に溢れた唾液を嚥下するため唇を合わせます。
「そんなに煩わしい思いをせずとも舌くらいひと思いに切り離してしまえばいいのに」
 僕らに逢うたいていの人々が、不思議そうに頸を傾ぎ、決まりきったように口を揃えてそう言います。
 けれども僕らは今のままが仕合わせなのです。今のまま、融合した舌を切り離さずにいれば何気兼ねなく二人愛し合うことが出来るのですから。
 何より僕らの融合した舌は、神の思し召しなのに違いありません。母が体調を崩し他界せずとも父が呑んだくれて僕らを橋の上から棄てずとも、きっとこの関係は何も変わりはしなかったでしょう。
 今日も僕らは唇を合わせ、どちらのものとも判らない唾液を貪るように啜ります。