ちゃちゃ


 婚姻が済み、君は僕の頭に種を植えつける。種はころころ丸くて手のひらで包みこむとほんのりと温かで、光のかげんによってさまざまに色を変える。僕が心持ち腰をかがめて頂を君の前に差しだせば、君は叮嚀な手つきで種を植えつける。君の指が触れるか触れないかのところでこちゃこちゃ動く、その感触が擽ったい。種が喰いこんだその一瞬間だけ、ちりんと熱が弾けたような感覚があった。種を受け容れた頂から爪先に向かって徐々に温みが広がってゆく。
 今度は僕が君の頂に種を植えつける番だ。君は小さくて華奢で、そんなところが僕にとって君を好きになった理由なのだけれども、だから腰をかがめてもらわずとも難なく君の頂に手が届く。君が少しく不安げな目をするので僕まで何となく心もとなくなりかけてしまう、そこを鼓舞して優しく君を諭す。大丈夫、だって一瞬ちりんと熱が弾けるだけのことなんだから。
 僕は君の頂に種を植えつける。君がしてくれたみたいにこちゃこちゃ触れるか触れないかのところで指を動かす。そのあいだ君は力いっぱい目をつぶっていた。睫毛が黒くて長いななんて思う。
 種はお互いみるみる発芽して葉を伸ばし茎を伸ばし花を咲かせる。花は高貴なファレノプシス。君の花も僕の花も同じく白い色をしているからよかった。ね、お揃いねと君が笑う。その笑顔があんまり可愛かったので僕は君にキスをする。すると頭の上でたわわに咲いたファレノプシスも重なり合って、受粉する。
 しゅわしゅわしゅわ、房はみるみる膨らんでいって止め処なく、君と僕との赤ちゃんが生まれるのはもうすぐだ。















ゃちゃち